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肥大型心筋症と診断されたら?

肥大型心筋症の進行について

監修:高知大学医学部 老年病・循環器内科学 教授 北岡 裕章 先生

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肥大型心筋症は長期にわたって病型や病態が変化し、心臓への負担により、心不全や不整脈を起こすことがあります。そのため生涯お付き合いする疾患として長期のフォローアップが重要です。

肥大型心筋症と関連してお亡くなりになる場合の主な原因は①突然死、②心不全死、③主に心房細動により起こる塞栓症による脳卒中です1

治療法の進歩もあり、2018年に行われた調査では年間死亡率は0.5-1.5%と報告されています1,2。現在心臓の肥大を認めない場合でも、家族に肥大型心筋症と言われた方がいる場合は成人では少なくとも5年に1度、20歳以下では急速に肥大が進むこともあるため1年~1年半に1度は通院して、心臓超音波検査などによる定期的な評価が推奨されています1

画像:肥大型心筋症と診断

突然死について

肥大型心筋症に伴う突然死の頻度は1%/年あるいはそれ未満といわれます1,2。突然死の可能性が高い肥大型心筋症の方は多くないですが、一部にリスクが高い方がいます。突然死のリスク因子としては“危険な不整脈(心室細動・心室頻拍)による心停止の既往”、“危険な不整脈(持続性心室頻拍)の既往”、“心疾患を原因とする、あるいは原因不明の最近の失神”や“心臓の壁の厚さが30mm以上”“突然死の家族歴”などが挙げられます。また閉塞性肥大型心筋症や拡張相肥大型心筋症、心室瘤(心臓先端のこぶ)、心臓MRIで広範囲にダメージを受けている結果、なども突然死のリスクを上げる要因となります。
肥大型心筋症による突然死のリスクが高いと判断された場合は、皮下植込み型の除細動器(ICD)が適応となります。ICDは肥大型心筋症により危険な不整脈がでたときに電気ショックをかけることで不整脈を止める役割を持ちます2

心不全について

心不全とは、心臓に何らかの異常があり、心臓のポンプ機能が低下して全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態をいいます3。心臓から血液が全身にスムーズに回らなくなると、心臓はたくさん血液を溜め込むようになり、左心室の上流にある肺の血管に血液がうっ滞するようになります。こうなると、動くと苦しいといった症状(息切れ・呼吸苦)が現れるようになります。肥大型心筋症では多くの場合は、左心室の拡張機能の低下による心不全(左室駆出率が保持された心不全)の病態を呈しますが、閉塞性肥大型心筋症では心臓の出口が狭くなる流出路狭窄により心拍出量低下に基づく心不全症状がより顕著となります1。さらに、拡張相肥大型心筋症へ移行した場合には、左室駆出率が低下した心不全を呈します。また、肥大型心筋症に合併する頻脈性心房細動や心室頻拍という不整脈は、血液の流れを悪くさせ、心不全の増悪因子となります1
肥大型心筋症に伴う心不全に使われるおくすりについては肥大型心筋症と診断されたら?肥大型心筋症の治療をご参照ください。

脳卒中について

脳卒中とは、脳の血管が破けたり詰まったりして、その先の脳細胞に血液が届かなくなり脳の働きに障害が起こる疾患です4。肥大型心筋症に伴う心房細動という不整脈は脳卒中を含めた塞栓症の重要なリスク因子となっています。心房細動は正常な心臓のリズムに比べて、心臓は速く不規則に収縮を繰り返します。そして心房細動では、心臓内の血液の流れが悪くなるため血のかたまり(血栓)ができやすい状態になります。心房細動によりできた血栓が心臓から脳に移動すると、脳の血管を詰まらせ(塞栓)、脳卒中が起こる可能性があります。また、肥大型心筋症の方で心房細動を合併すると突然死や心不全・脳卒中による死亡リスクが上がること、息切れや呼吸困難などの症状が出やすくなることもわかっています1
肥大型心筋症の方では心房細動が見つかった時点で、塞栓症を予防するために血を固まりにくくする「抗凝固薬」と呼ばれるお薬を開始することが推奨されています1

  1. Matsumori A, Furukawa Y, Hasegawa K, et al. Epidemiologic and clinical characteristics of cardiomyopathies in Japan: results from nationwide surveys. Circ J 2002; 66: 323-336.
  2. 心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)、日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン
  3. 公益財団法人日本心臓財団:心不全とはなにか https://www.jhf.or.jp/check/heart_failure/02/(2024年11月閲覧)
  4. 日本脳卒中学会:脳卒中とは https://www.jsts.gr.jp/common/overview.html(2024年11月閲覧)